日本文学史:上代から中古までの古典文学作品の紹介

 Course Title: 日本文学史(一)        Instructor: 山口 一樹

 Academic Year: 2024

 日本文学のうち、上代から中古までの古典作品を対象として成立年代順に授業で学んだ作品の簡単な分析を進行します。


(1)記載文学の成立 古事記


国から漢字(かんじ)伝来すると、文字によって書き記されるようになった。つまり、記載文学(きさいぶんがく)の成立。八世紀初めには、『古事記(こじき)』『日本書紀』『風土記(ふどき)』が相次いでまとめられ集大成された。


謡から派生した和歌は『万葉集(まんようしゅう)』としてまとめられ、編まれた。また仏教伝来後に発生した仏教説話も『日本霊異記(にほんれいいき)』収められている。


序文によれば、天武天皇(てんむてんのう)が諸氏族に伝わる帝紀や本辞を比較検討して修正を加え稗田阿(ひえだのあれ)に誦み習わせた後、和銅4年に元明天皇(げんめいてんのう)の命を受けて太安万侶(おおのやすまろ)が稗田阿礼のものを撰録し、完成した。


序文は純粋な漢文体で記されるのに対し、それ以外は変則(ヘンソク)の漢文体(カンブンタイ)で記され、重要な語句は万葉仮名(マンヨウカナ)で記されている。




(2)万葉集の世界


万葉集:現存するわが国最古の歌集


#構成

二十巻構成。約四千五百首が収録。各巻中の歌は主に内容による部ぶ立たてで分類されており、成立の古新によって配列されている場合が多い。

雑歌(ぞうか)・相聞(そうもん)・挽歌(ばんか)を三大部立とする。


#表記
漢字を表音ひょうおん文字として使用する万葉がなが用いられている。


#詠者・詠作年代

作者は天皇から庶民まで多岐にわたり、地域も大和を中心としながら東国、九州に及ぶ。巻十四には東歌(あずまうた)が、巻二十には防人歌(さきもりうた)収められる。




(3)仏教説話集の成立 日本霊異記


著者は薬師寺の僧景戒(けいかい/きょうかい/きょうがい)

正式名称は『日本国現報善悪霊異記』

 

#構成と内容

巻の序文によれば、説話を通して仏教の因果応報(いんがおうほう)の原理を説き、現世の行動の規範を示すことが著作の意図であることが伺える。

 

 収説話

資料「日本霊異記①悪逆の子」

資料「日本霊異記②恵勝法師」

資料「日本霊異記③釈智光と行基」





(4)勅撰和歌集の成立 古今和歌集


*自国の文字の変遷が時代の変遷に深く繋がってる

国風暗黒時代、以後「国風」文化の発展が始まる → カナ文字発明


#『古今和歌集』の世界

  • 国最初の和歌集:「勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)     (++今時代の残っている現存最初の和歌集:「万葉集」 
  • 「勅撰和歌集」は醐天皇(だいご)の勅命により
    紀貫之(きのつらゆき)
    紀友則(きのとものり)
    凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
    壬生忠岑(みぶのただみね)が撰者となって編まれた。
  • 紀貫之が作とされる「仮名序」と紀淑望が作とされる「真名序」が付されている。


#歌風の展開と代表歌人

対象が即物的に詠まれるのではなく、見立て擬人法が用いられるなど、作者の観念世界で知的に再構成されている。


##【第二期】六歌仙ろっかせんの時期

= 嘉か祥しょう三年(八五〇)~寛かん平ぴょう二年(八九〇)

六歌仙の活躍期。六歌仙とは仮名序で「近き世にその名聞こえたる人」と評される六人のことで、僧正遍昭(そうじょうへんじょう)・在原業平(ありわらのなりひら)・文屋康秀(ふんやのやすひで)・喜撰法師(きせんほうし)・小野小町(おののこまち)・大伴黒主(おおとものくろぬし)を指す。






(5)作り物語の成立 竹取物語


かな文字の発明と散文作品の多様化とその背景:

  • かな文字がが普及

カナ文字の発明と散文作品の多様化。

平安時代において発明され普及 → 作り物語歌物語が生まれた

  • 竹取物語』、『うつほ物語』、『伊勢物語』、『土佐日記』など

竹取物語』:現存最古の物語++源氏物語の中で竹取物語が物語の親だと書かれているから)




(6)歌物語の成立 伊勢物語


前の作り物語に続いて、歌物語。9世紀に伊勢物語と推測されているが、作家である「業平(在原)」は9世紀前から存在した。

  • 10世紀初めから半ばに成立、正確な作者は未詳。
  • 和歌を中心とする短編の章段で構成され、「在原業平」(ありわらのなりひら)と思しき主人公の一代記。



(7) 長編物語の成立 うつほ物語


#成立

10世紀後半ごろ成立か。作者未詳。源順作説等がある。現存する作品では、日本国初の長編物語であるとされる。






(8) 日記文学の成立 土佐日記


#日記と日記文

日常的な備忘録としての実用性を目的とするものであり、多くは男性によって漢文で記されていた。私的な感懐を記した文学としての日記は紀貫之『土佐日記』が嚆矢とされる。
(漢文日記 vs カナ日記:内面性が結構違う点が特徴)


『土佐日記』の世界

成立:承平五年。国初の日記文学であるとされる。

作者:紀貫之(きのつらゆき)。歌人。『古今和歌集』の撰者であったほか、家集『貫之集』もある。




(9) 女流文学の開花 蜻蛉日記


#女流文学の開花

10世紀末から11世紀にかけて摂関政治が全盛を迎えるころ、かな散文の文学は女性たちの手によって大きく進展した。藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)の『蜻蛉日記』では夫兼家との夫婦生活の真実を多数の和歌とともに表白された。


#成立

天延二年(974)以後の成立。


#作者

藤原道綱母。父の藤原倫寧(ふじわらのともやす)は中流の受領層(地方官職)であるのに対し、夫となった藤原兼家(ふじわらのかねいえ)は父右大臣師輔の三男、権門の嫡流であった。




(10)女房文学の世界 枕草子


#女流文学の開花・女房の活躍

10世紀末から11世紀にかけてかな散文が全盛を迎えるころ。この女流文学は宮中に出仕した女房たちがサロン内で活躍するなか作成したものも多い。

清少納言『枕草子』は華やかな宮廷世界を背景に独自の文学世界を形象し、紫式部『源氏物語』は、既存の物語や日記、和歌などを統合しながら壮大な虚構の世界を実現させている。


# 『枕草子』の成立

長保三年(1001)ごろ成立か。本作の跋文には、作者が一条天皇の中宮藤原定子(ふじわらのていし)から草子を下賜されて執筆に至ったことが記されている。

 

#作者

清少納言(せいしょうなごん)。中宮定子に仕えた女房である。父清原元輔、曽祖父清原深養父はいずれもすぐれた歌人。自身も家集『清少納言集』が伝わっている。


#その構成と内容は研究史では三種に分類してきた。

① 日記的章段
定子に仕えた後宮生活の体験が記された章段。実在の人物も多く登場する。

例:「大進生昌が家に」「上にさぶらふ御猫は」等


② 類聚章段(るいじゅう)
様々なものを列挙して述べた章段。「は」型と「もの」型がある。

例:「山は」「すさまじきもの」等


③ 随想章段(ずいそう)
①②にも分類しえない、自由な感覚が書き連ねられた章段。

例:「春はあけぼの」「生ひ先なく」等





(11)王朝文学の隆盛 源氏物語


平安時代として有名。王朝文学の隆盛として有名。(=源氏物語)


#作者:

紫式部(むらさきしきぶ)。歌人としても文人としても有能な人物だった。

紫式部も家集『紫式部集』伝わっている。また紫式部は一条天皇の中宮藤原彰子に仕えた女房であり、宮仕え中の見聞が『紫式部日記』に記されている。


#構成と内容

全五十四巻。内容は主に三部に分けて理解できる。

=(三部構成

「源氏物語」は愛のストリだけではなく、栄華を極めるストリでもあるのだが重要なテーマになる。

源氏物語では3つ重要なパートがあるけど、今日は藤壺について強:三部構成による分類によると、第1は次のようだ。

母親が小さい時に母親を亡くなってしまう。でも浮気として言われる母親に似っている藤壺を伝えて聞く。そして、後に光源氏は禁技として義理の母親でもある藤壺を恋する。光源氏は「あおいのろべ」と結婚する。





(12)歴史物語の成立 栄花物語


平安時代末期に至り貴族社会が退潮するなか、華やかな過去が回顧されるようになり、栄花物語(えいがものがたり)や『大鏡』などの歴史物語も生まれた。


#栄花物語』の成立

正篇は長元三年(1030)ころ、続篇は寛治六年(1092)ころ成立か


#栄花物語』の作者:

正篇の作者は赤染衛門(あかそめえもん)とする説が古くから存在する。続篇の成立には、後一条天皇の中宮藤原威子(道長三女)等に仕えたとされる女房、出羽弁(いでわのべん)関与したと考えられている。


#構成と内容:

(全40巻)巻第30つるのはやしまでを正篇巻第31殿上の花見からを続篇として理解されている。

宇多天皇(889)から堀河天皇の寛治六年(1092)に至る約二百年間の宮廷貴族史が様々な資料を基にしつつ編年(へんねんたい)で叙述されており、とくに藤原道長栄華が主たる内容として語られている。

赤染衛門の夫匡衡の属する大江氏は代々、国史(りっこくし)の第六『日本三代実録』に次ぐ勅撰国史『新国史』の編纂にあたっていたが未定稿に終わってある。


編年は年月の順によって出来事を叙述する方法をいうのに対し、伝体(きでんたい)は本紀(ほんぎ:帝王の系譜と事跡)と列伝により成るものをいう。

ex) 『史記』等中国の正史は紀伝体を採用している。



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